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2010/07/29

台湾の、灰色の牛が… | おかやまJAZZフェスティバル

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“廃虚となった構造物”というのは、かつてはカッチリしてたものが秩序をなくして荒れるにまかされたコトで生じるから、それを眺めると、眼にはみえないけれども時間の経過を感じて、それで何らかの感慨が湧くという次第なのだった。
犬島の銅の精練所跡にはまさにそれがあって、8年前に劇団・維新派の芝居がそこであった時には、自分の体内の時間軸が揺すられてジンワリと歪んでいくような奇妙を大いに味わったもんだった。
維新派の野外劇は装置がとにかく大掛かりで、視野の左と右いっぱいに、奥行きもとてつもなく深いといった按配ゆえ、それが精練所の広大な廃虚によく溶け合って、幻のような異界が眼の前に広がるのだった。
8年が経過して、この夏、維新派がまた犬島で芝居を見せてくれた。
8年前の「カンカラ」の時以上に装置は大掛かり。
20世紀。東南アジア一帯に展開した日本人を通してアジアの歴史を還りみるといった内容のようだが、細かいコトはどうでもよい。
舞台上には身の丈4mの巨人も登場して、これがチャンと歩くから驚く。
「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」というタイトルで、およそ30名ばかりの役者さんが躍動する。
時に下手、時に上手、時に舞台のはるか奥の高台からと縦横に登場しては、語り、踊り、舞う…。
アジアが舞台設定ゆえに音楽にはどこか馴染みある東洋的旋律が多々含まれるけれど、ボクは80年代のロックバンド「JAPAN」のアルバム「ブリキの太鼓」を想起した。
「ブリキの太鼓」の視点は西洋人が見た中華ってな按配が濃厚にあって、それは旅行者としての眼ではあったのだけどもなかなか秀逸なものだった。
維新派の今回の音楽は、観光客ではなく、現地に溶け入ろうとした日本人のカタチをサウンドとして構築してあるようだけれども、音の響きに共通なものを感じたからボクは何だか懐かしいような感慨ももった。
そのサウンドに合わせ、舞台上では、
「ト〜ヤ・ト〜ヤ・ト〜ヤ」
の声が轟く。
ある人にいわせると、それは維新派独特の掛け声だという。
が、ボクには、「遠や・遠や・遠や」と聞こえる。
「カンカラ」もそうだったし、今回もそうだ…。
まだ、まだ、届かない… といった按配な呪文めく言葉に聞こえる。
それがサウンドにのり、ダンスにのり、30名のいっせいの声として届くから、一種の心地よさと戦慄を同時に味わうようで、その一瞬一瞬に、
「ぁ〜、オレはいま、維新派の芝居を観てるんだっ」
と、何やら嬉しくなる。
が、一方で、どこか、かすかに、居心地の悪さをおぼえているのだ。
それはたぶん、”廃虚”であった精練所が、今は数年前から”管理されて保守された”場所に変ってしまったことからくる、一種のガッカリ感から兆しているよう思える。
直接に、芝居が悪いのではなく… 場に、居心地の悪さをおぼえているワケだ。
8年前の芝居のさいは、どこを歩こうとも不自由はなかったけど、今はあちらこちらにとロープの柵がはられて、”道”以外は歩けない。
“廃虚”を廃虚のままに展示して公開するには、確かに管理しなくちゃどうしようもないワケなのだけども、秩序を失ってしまった荒涼であったから面白かったものが、荒涼を見せるがために管理されてしまうと、たちまちに単なる遺物となって、たとえばアテネのパルテノン神殿のような観光施設になってしまっているようでもあって… それが芝居の、野外芝居の装置としての醍醐味を薄れさせていたよう… ボクは感じるのだった。
足したつもりが、引いてしまっていないか… とボクは訝しむのだった。

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むしろ、密かに、今回ボクが楽しめたのは、併設の屋台村だった。
前回では犬島に住まう方々の出店もあったけど、今回はそれがないので残念にも思えたけど、狭い小路にひしめいた維新派が運営の小さな店たちの活気が、芝居の演目「台湾の…」に通じるアジア的ヴァイタリティーみたいな、他所行きなおすまし顔じゃない、猥雑や誠実やハッタリやらがゴチャリと混ぜ合わさった雑っかけな気軽さがオデンのオツユみたいにアチコチ沁み出していて、それが気に入った。
店主たちは皆な日焼けしきり、営業開始前からビールを呑んでるし、あちらこちらでタバコの煙がのぼる。それでいて商売熱心。
なにやらアジアの小都な路地にいるような気分が湧いてきちゃって、芝居の前ゆえビール一杯だけのつもりで屋台の日陰の木の越しかけに座ったが最後、路上観察が楽しくって… 気づくと写真のような按配。
でもま〜、これがイイのだわい。
おまけに、そうやって路傍の石と化してると、観察してるつもりが観察もされていて、コードMのMAKI嬢やルネスホールのY嬢やら○○市のXXさんやらやらやら… 偶然にもホドがありましょうやと思えるくらい知り合いにあってしまって… 維新派の磁力や強し… と再認識させられたのだった。

投稿者:y-yamamoto

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