バックヤード

2010/07/03

維新派ふたたび | おかやまJAZZフェスティバル

yuukichi_matumoto

犬島で劇団維新派の「カンカラ」を観たのは2002年の夏のコトだ。
翌々日にはジャズフェスのイベントもあって、当時のボクはジャズフェスの記録を撮るという役割だったのだけども、だからなんだかせわしくもあり、かつ、そのせわしさを楽しんでもいるといったアンバイな… 夏だった。
この公演でもって犬島という島は大きくクローズアップされたと思う。
ボクは彫刻家の寺田武弘氏たちと一緒に出向いて島でキャンプした。
芝居の翌朝、寺田さん特製の「タマネギとジャガイモ」の塩っぽ風味のスープ(おかわりする程にうまい!)をたいらげ、ブラ〜リと湾岸に沿って歩いたら、30分で島内を一周出来たんで小さな衝撃をおぼえたもんだ。
こんな小さな島に3000とも5000人ともいわれる従業者を抱えた銅の精錬所(精練ではないよ)があったんだな〜… と、その頃の人の密度と今の閑散の対比が出来なくっていささか迷妄した。
「カンカラ」の内容を、実は、ボクはおぼえていない。
ストーリーを思い出せない。
芝居がはじまったのはまだ明るい時刻だったのだけど、やがて暗くなって、月がでた。
なにしろ大掛かりなステージだ。そのステージのアチャラやコチャラから繰り出される芝居というかダンスというかを眺めつつ、ボクは上空の月の動きを眺めていたりもした。
夜の闇が浸透するに連れ、むろん芝居も進行しているのだけれども、月が眼の左の方から昇り、終演の頃には南天の真ん中あたりにまで動いてたのを "感じて" た。
その月の運行がボクの「カンカラ」体験だった。「カンカラ」のストーリーはボクにはもうどうでもよくって、そうやって月が動いてる下方でもって芝居の場にいる自分というのを、何やら濃く感じたのだった。SFファンタジー的な異界の只中にいるような不思議を身体で感じ、昂揚した楽しさを味わった。
それから、もう8年も経ってるんだな…。
その犬島で、その維新派がまた大掛かりな野外劇場を作って演劇しちゃうというのだから、ボクはワクワクする。
前回の、8年前の仕掛人は岡山の演劇界をリードする大森誠一氏(現NPO法人・アートファーム代表)と岡山市の文化振興課と記憶する。
とてもステキなパンフレットというかチラシがあって、妙に魅かれたもんだ。
今回は香川県が主体となって、ベネッセさんが濃くバックアップするというカタチの『瀬戸内国際芸術祭』の一環というコトらしいけど、詳細はボクにはどうでもよい。
維新派の舞台をまた犬島で体験できるというトコロに、ボクはワクワクをおぼえてる。
7月2日。その維新派の代表である演出家の松本雄吉氏の講演がデジタルミュージアムの講義室であったんだ。
タイトルは「風景としての劇場」というものだ。こんなイイ機会はそうあるものではないからボクは拝聴に出向いたよ。
前日の1日にはそのデジタルミュージアムでちょっとした仕事があったもんだから出向いてるんだけども、これは観客として出かけて講義室に着座した。
デジタルミュージアム・講義室の無線マイクは、ハウリングをおこす…。
1ヶ月ほど前の別イベントに参加したさい、この不愉快なマイクの不具合に気づいてはいたのだけども、1ヶ月経った今回もやはり… だったのでチョット残念だったけど、ま〜、それは小さなコト。
ジャズフェス、というカタチでのイベントを作ってる立場にボクはいるけれど、それゆえ余計、松本氏の講演には教わるトコロが大であった。
『風景を劇場化する』というのがキーワードだ。
維新派は日本国内だけではなくって世界のアチャラコチャラで大掛かりな公演を行なってる。
裏方50人、役者50人が開演2ヶ月前くらいから現地に住まって舞台をみずから作る。だから、ちょっと、町にサーカスの一座がやってきたみたいな感もある。
芝居本番時には照明マンや装置の担当もやって来て、総勢は150人を越えるという次第らしい…。
犬島の場合、犬島の住民はわずか50人なので… 維新派が滞在中は4倍の人口になる。
ともあれ、とにかく、舞台は大掛かり。市民会館やらシンフォニーホールといった、ハコのサイズでは計れない舞台が作られる。横の広がり、縦の高さ、奥行き… 野外ゆえの醍醐味が味わえる。
で、講演の中で、松本氏は、
「どこの場所でも、そこに住まう方々には日常をちょっと破壊して欲しいという願望があるようだ」
と、おっしゃった。
これはオモシロイ… とボクは思ったぞ。
維新派が滞在する、この数ヶ月間の島民の心の中の動きというのは、どんなもんだろか?
芝居にも興味はあるけれど、そんな所にもボクは興をひかれる…。
おそらく、松本氏にとってもそれはテーマなんだろうと思う。
今回の芝居のタイトルは『台湾の、灰色の牛が背のびをした時』だ。
タイトルの中のどこをまさぐってみても、犬島とは関連がないよう思える。
が。
が。
が、だからこそ… これは芝居を観てから言葉を出さなきゃいかんなと思うのだが、オモシロイと思うのだ。
廃虚としての巨大煙突がある犬島という "場" に迎合するのではなく、むしろ、そのイメージを越えた所でもっての風景の "破壊" を目論んでおられるのかと思う。
創造と破壊。あるいは、破壊と創造、というのは音楽を含めて全てのアートシーンにおけるキーなんだろうけれども、犬島の島民にしてみれば、「ちょっと破壊して欲しい」という願望と共に、「犬島の、灰色の牛が背のびをしたとき」ではなく、「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」というタイトルには、鮮烈よりも異質を濃くおぼえるものであろうと思う。
「ここは犬島、台湾島ではござらんのですが…」
てな違和が粘ばっこい感じで心の底の方で湧いているんではなかろうかと思うが、そこを含めて、一体どのようなカタチのものが眼の前で展開されるのか… 身長4mの "彼" なる人物も登場とのコトで、これはホンキで面白くなりそうだと期待をふくらませているワケだ。


この10月2日の土曜日。おかやまJAZZフェスティバル実行委員会は、中国銀行本店前広場で「JAZZ NIGHT」というライブイベントをやる。
中国銀行という、いわばお堅いイメージ漂う場所で年に一度だけ、JAZZで色付けされた柔らかい空間が現出するワケだけど… 今年で9回目になる、ボクらの大きな柱の一本たるこのイベントに、松本理論(*^o^*)を持ち込めば、もっと楽しいものを創造出来ないかしらと… そう思ったりもしている。
お芝居の場ではなく、あくまでもライブなコンサートなのだけども、場を作るという意味合いでは、文字通りなストレートな意味で中銀前を "破壊" などしないけど、やはり創造的なものにしたいな… と松本氏に触発されて密かに思ったりしたワケだ。


というワケで、ネット上でのチケット予約はこちら。
http://setouchi-artfest.jp/
『台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき』
7月20日〜8月1日(7/26のみ休演)
犬島精錬所跡・野外特設劇場 : S席4500円 A席3500円
雨天でも上演されるし、島ゆえ天候の変化も大きいので、雨合羽など持参するのが得策ですぞ。傘よりカッパがイイのです。
ちなみに、ボクは7/27に行く!


次いでに記しておくと、来たる8月11日(水曜)の18時30分より、デジタル・ミュージアム・講義室でもって、平田オリザさんが講演をされますな。
『公共劇場とは何か』というタイトルで参加費は800円。
こちらも学ぶコト多き講演の予感がします。

問い合わせは、NPO法人アートファームへ。
メールはこちら→  info@artfarm.or.jp

投稿者:y-yamamoto

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